⑰PMRF機能低下による股関節の痛み

まず、初めにPMRFが何かわからないという方がほとんどだと思います。PMRFとは日本語で「橋延髄網様体」(きょうえんずいもうようたい)と言います。

橋延髄網様体（PMRF）は、脳幹(のうかん)のうち、橋と延髄の中心部に存在する、神経細胞と神経線維が網目のように入り混じった構造を指します。

この部分は、

〇覚醒・睡眠の調節、呼吸や心拍などの生命維持機能の統合

〇体幹の運動調節

など、生命維持と身体の活動に不可欠な機能に関与しています。

では、このPMRFの機能低下がどのように股関節の痛みへと繋がっていくのでしょうか。

それを理解するには、私たちは自分の体をどのように動かしているのか、それを先に知る必要があります。

私たちの体の動きには〝脳“が密接に関係しています。

脳は大きく右脳と左脳に分かれ、一般的に右脳が左半身を、左脳が右半身をそれぞれコントロールしていると言われています。

例えば、私たちが左足を動かそうとすると、

①右脳の大脳皮質(だいのうひしつ)という場所が指令を出し、左側の小脳(しょうのう)を通過して左足へと指令がいきます。

しかし、②左足を動かすためには右足を固定し、右の体幹を安定させる必要があります。

この時、右側のコントロールを行っているのが右のPMRFなのです。

つまり、先ほどの小脳を通過する指令とは別に、右の大脳皮質から右のPMRFに指令がいき、右側のコントロールを行うことで、左足を動かすことが可能となるのです。

では、ここからはPMRFの機能低下がどのように股関節の痛みに繋がっていくのか。

例えば左側のPMRFに機能低下起こった場合、次のような流れになります。

①重心が左側に傾き、股関節が内転位荷重(ないてんいかじゅう)となり股関節に負担がかかる。

※内転位荷重とは股関節が内側に入り込む状態のことを言います。

②体の左側が交感神経優位になり、炎症反応が起きやすくなる。

③左股関節の外旋筋過緊張、内旋筋弱化が起き、股関節が不安定な状態になる。

以上のようなことが起こると、股関節への負担が大きくなり痛みを引き起こしてしまうのです。

この様に、PMRF機能不全があると、いくら股関節周囲の施術をしても改善せず、却って痛みを助長してしまうことがあるため、注意が必要です。

このパターンの股関節の痛みを改善するためには、PMRFの機能低下を改善する必要があります。PMRFの機能低下が起きるのは大脳皮質の機能低下が原因とされています。

つまり、「右の股関節の痛みに対して痛い右股関節に色々と治療したけど症状が悪化する一方だ」という方はPMRFの機能低下が原因による股関節の痛みかもしれません。

当院では、次の流れで「PMRF機能低下による股関節の痛み」に対してアプローチします。

1．痛む部位とは反対側のツボに鍼治療や整体を行なうことで大脳皮質の活性を行っていく。

例えば、右股関節の痛みを改善するためには右PMRFの機能低下の改善が必要です。

それには、右大脳皮質の機能を上げる必要があるため、左半身からの体性感覚、前庭覚、視覚から脳へ刺激を入れ大脳皮質の活性をおこなっていきます。

2．PMRFの機能低下を改善するための脳・神経エクササイズをおこなう。

PMRFが活性しやすくするためのエクササイズ動画を処方し、毎日ご自宅で行ってもらいます。

3．過去の怪我の既往がある場合、その部位の治療を行っていく。

例えば、過去に左足首の捻挫の既往があり、患部を１ヶ月固定していたなどの経験があると、足首からの感覚入力不足により右PMRF機能低下が起きることがあります。過去の怪我をした部位に対して鍼治療、整体治療を行い、正しい感覚入力を取り戻すことでPMRFの機能を活性していきます。

これまで触れてきた通り、股関節の痛みは17パターンありますが、多くの整骨院や整体院ではそこまで細かく部類分けができません。それは股関節に対しての専門的な知識が薄いからです。

また、上記で挙げたように「PMRFの機能低下」による股関節の痛みに対するアプローチも当院では様々な角度からアプローチをしています。

股関節の細かな解剖学の知識や治療法を得るためには非常に時間がかかりますが、当院では年間200時間以上かけて行う技術研修で培った高い技術で、股関節の痛みを根本から改善していきます。

これまで様々な整形外科、接骨院を受診しても治らないという方は是非一度土井治療院にご相談ください。

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