「ローテーターカフを伸ばしましょう」と言われたことはありませんか?
野球肩で悩む方の多くが、
・棘上筋(きょくじょうきん)
・棘下筋(きょくかきん)
・小円筋(しょうえんきん)
・肩甲下筋(けんこうかきん)
いわゆるローテーターカフのストレッチを勧められた経験があると思います。
確かに、野球肩の方を触診すると、ローテーターカフが硬くなっているケースは非常に多く見られます。
しかし、問題は「なぜ硬くなったのか」という点です。
実は、ローテーターカフが原因で肩を痛めているケースは、臨床ではそれほど多くありません。
ローテーターカフは「被害者」であることが多い
ローテーターカフは、肩関節を安定させながら、投球時の強烈な回転ストレスを支えるブレーキ役です。
ところが――
肩甲骨の動きが悪くなるとどうなるでしょうか?
- 肩甲骨がスムーズに上方回旋しない
- 後傾がうまく起こらない
- 胸郭(肋骨)との連動が失われる
この状態で腕だけを振ると、
肩関節にかかる負荷が一気に増大します。
その結果、
無理やり頑張らされるのがローテーターカフ
過剰緊張 → 硬さ → 痛み
このような流れをたどるのです。
つまりローテーターカフは、
**「悪者」ではなく「尻拭いをさせられている存在」**なのです。
本当に注目すべきは「肩甲骨を動かす筋肉」
臨床経験上、野球肩の方に共通して硬くなりやすいのは、次の筋肉です。
・僧帽筋上部
・肩甲挙筋
・大菱形筋・小菱形筋
・前鋸筋(特に上部線維)
・広背筋
・大胸筋
・小胸筋
これらはすべて、肩甲骨の位置・動きをコントロールする筋肉です。
肩甲骨の動きが悪くなると、ローテーターカフは「代わりに頑張るしかなくなる」。
ここが非常に重要なポイントです。
「じゃあ、その筋肉をストレッチすればいいのでは?」
ここで、多くの方がこう考えます。「僧帽筋や広背筋が硬いなら、そこをストレッチすればいいですよね?」
しかし、実際には、それだけでは改善しないケースがほとんどです。
なぜでしょうか?
筋肉が硬い本当の原因は「神経」にある
筋肉が硬くなる理由は、大きく分けて2つあります。
- 使いすぎによる筋疲労
- 神経の通り道が圧迫され、緊張が抜けなくなっている
野球肩で問題になるのは、②のケースです。
肩甲骨周囲には、
- 首から出た神経
- 腕神経叢
- 肩甲背神経、肩甲上神経 など
多くの神経が走行しています。
これらの神経が、
筋肉や筋膜、肋骨との間で圧迫・絞扼されると、
・「力を抜け」という信号が届かない
・筋肉が常に緊張したままになる
・ストレッチしてもすぐ戻る
という状態が起こります。
神経が絞扼(こうやく)されていると、ストレッチは効かない
神経が絞扼された状態で、
筋肉を無理に伸ばすとどうなるのか。
・一時的に柔らかくなった気がする
・しかしすぐ元に戻る
・場合によっては痛みが悪化する
これは、
電線が潰れているのに、先端だけ引っ張っている状態に似ています。
問題の本体は絞扼による「神経の滑走不全」であり、
筋肉そのものではないのです。
本当に必要なのは「神経を動かすケア」
そこで重要になるのが、
・神経スラッキング
・神経スライディング
と呼ばれるアプローチです。
これは、
**神経を伸ばすのではなく「滑らせる」**ことを目的とした運動です。
・痛みを出さない
・呼吸と連動させる
・ゆっくり行う
これにより、
・神経の通り道が広がる
・筋肉への異常な緊張指令が解除される
・結果として肩甲骨が動き出す
という変化が起こります。
実際の臨床でよくある変化
私自身、野球肩・投球障害の臨床を数多く経験してきました。
その中でよく見られるのが、
・ローテーターカフのストレッチ → 変化なし
・肩甲骨周囲筋のマッサージ → 一時的改善
・神経スライディング → その場で可動域改善・痛み軽減
という流れです。これは決して特別なケースではありません。
まとめ:野球肩に「効く」のは何か?
最後にポイントを整理します。
- ローテーターカフが硬いのは「結果」である
- 原因は肩甲骨の動きの低下
- 肩甲骨の動きは筋肉だけでなく神経が支配している
- 神経が絞扼されていると、ストレッチは効かない
- 神経スラッキング・スライディングが回復の鍵
もしあなたが、
・いくらストレッチしても良くならない
・投げると同じ場所が痛くなる
・肩だけでなく首や背中も張る
このような状態であれば、「筋肉」ではなく「神経」の視点を一度取り入れてみてください。
それが、長く野球を続けるための大きな分岐点になるかもしれません。








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