野球のピッチング、バレーボールのアタック、バドミントンのスマッシュ、テニスのサーブ。これら「オーバーヘッドスポーツ」において、多くのアスリートを悩ませるのが “肩の痛み” 。中でも最も頻繁に下される診断名が「インピンジメント症候群」です 。
しかし、整形外科を受診し、痛み止めの注射を打ち、リハビリで筋トレに励み、マッサージで肩をほぐしても、一向に良くならない、あるいはスポーツを再開するとすぐに痛みが戻ってしまうという方が後を絶ちません 。なぜ、これまでの治療であなたの肩は治らなかったのでしょうか。
本稿では、従来の「肩だけを見る」アプローチの限界を指摘し、機能神経学や身体の左右非対称性という新しい視点から、インピンジメント症候群の根本原因と解決策を深掘りしていきます。
1. インピンジメント症候群の正体と「一般的な治療」の限界
インピンジメント(衝突)とは何か
「インピンジ(impinge)」という言葉には、英語で「衝突する」「挟まる」という意味があります 。肩関節は、上腕骨(腕の骨)の頭が、肩甲骨のくぼみにフィットする構造になっていますが、その上には「肩峰」という屋根のような骨が突き出しています。
腕を上げる動作の際、この屋根(肩峰)と腕の骨(上腕骨頭)の間にある筋肉(棘上筋)や、クッションの役割を果たす袋(肩峰下滑液包)が文字通り「挟み込まれる」ことで炎症が起き、痛みが生じます 。
特徴的な症状:ペインフルアークサイン
インピンジメント症候群には、他の肩疾患とは異なる独特な痛みの出方があります。
・特定の角度での痛み(60°〜120°): 腕を横から上げていく際、この範囲で「ズキッ」とした強い痛みが生じます。これを「ペインフルアークサイン」と呼びます 。
・上げきると痛くない: 不思議なことに、120°を超えて腕を高く上げきってしまうと、挟み込みが解消されるため、痛みを感じなくなることが多いのです 。
・夜間痛: 痛む方の肩を下にして寝ると、圧迫によって痛みが生じ、睡眠が妨げられることもあります 。
なぜ従来の治療では不十分なのか
一般的に医療機関で行われるのは、以下の治療です 。
・炎症を抑えるための鎮痛目的の注射
・一定期間のスポーツの中断(安静)
・肩のインナーマッスル(回旋筋腱板)の強化
・肩甲骨の可動域を広げるためのストレッチや筋膜調整
これらの処置で改善するケースも確かにありますが、現実には「肩周辺だけ」へのアプローチでは限界がある症例が数多く存在します 。なぜなら、「なぜ肩の骨と骨の間が狭くなってしまったのか」という根本的な動機(原因の連鎖)が解決されていないからです。
2. 視点を変える:原因は「痛くない側の体幹」にある
インピンジメント症候群が治らない方の多くに共通していること、それは痛みのある肩そのものではなく、「反対側の筋肉の緊張」です 。
右肩が痛いなら、左の体幹を見よ
例えば、右利きのアスリートが右肩のインピンジメントを抱えている場合、その真の原因は左側の背中やお腹(腸肋筋、最長筋、外腹斜筋)の過剰な緊張にあることが非常に多いのです 。この「反対側の緊張」が、以下のような負の連鎖を引き起こします。
1.重心の崩れ: 左側の体幹筋肉(腸肋筋、最長筋、外腹斜筋)が短縮・緊張すると、身体の重心が左側に引っ張られ、傾きます 。
2.首による補正: 重心が左に崩れると、脳は頭を中央に戻そうとして、右側の首の筋肉(斜角筋)を過剰に緊張させます 。
3.肋骨の固定: 右斜角筋が硬くなると、第1・第2肋骨を上に引き上げた状態でロックしてしまいます 。
4.肩甲骨のポジション異常: 肋骨が浮き上がると、その上に乗っている肩甲骨は、正しい位置を保てず「前方に傾き(前傾)」、「外側に広がる(外転)」という悪いポジションに固定されます 。
5.インナーマッスルの機能不全: この状態では、肩を支える「僧帽筋下部」などの重要な筋肉が引き伸ばされて弱くなり、肩甲骨が本来行うべき「後傾」や「上方回旋」ができなくなります 。
結果として、腕を上げた時に肩甲骨がうまく逃げてくれず、骨同士が衝突してインピンジメントが発生するのです 。つまり、右肩の痛みは、左側の体幹が固まっていることによる「結果」に過ぎないのです。
3. 筋肉を緊張させ続ける「脳と神経」の6つの要因
マッサージやストレッチで左側の筋肉を緩めても、翌日にはまたガチガチに戻ってしまう。そんな経験はないでしょうか。それは、筋肉に「緊張し続けろ」という命令を出している指令塔、すなわち「脳や神経系」に原因があるからです 。
当院では、以下の6つの神経学的観点から、あなたの筋肉が緩まない理由を解明します 。
① 前庭系(バランスセンサー)の左右差
耳の奥にある前庭系(三半規管や耳石器)は、重力に対して身体がどう傾いているかを常に感知しています 。 もし左側の前庭系からの入力が弱くなっていると、脳は「左側に倒れそうだ」と誤認します 。この誤った情報に基づいて、脳は転倒を防ぐために、左側の体幹筋肉を常にフル稼働させて身体を支えようとします 。これが、無意識のうちに作られる「消えない緊張」の正体です。
② 視覚の左右非対称(周辺視野)
人間は視覚情報によっても姿勢を制御しています。もし左側の「周辺視野(景色を広く捉える能力)」がうまく機能していないと、脳は「左側から何かが来ても気づけない、危険だ」と判断します 。 この不安から身を守るために、脳は「防御姿勢」として左側の体幹を固めます 。本人が気づかないレベルの視野の偏りが、筋肉のトーン(張り)を左右非対称にしてしまうのです。
③ 内臓入力由来の反射(内臓ー体性反射)
内臓と筋肉は、脊髄という共通の神経経路を介してつながっています 。 例えば、左側にある結腸(大腸)や腎臓に慢性的な疲労やストレスがある場合、その「異常信号」が脊髄に流れ込みます 。すると身体は、その弱っている臓器を守るために、同じ高さにある体幹の筋肉を反射的に収縮させます 。これを「内臓一体性反射」と呼び、内臓のケアをしない限り、表面の筋肉を揉んでも緊張は取れません。
④ 呼吸パターンの異常
呼吸の主役である「横隔膜」は、左右で形も役割も異なります。特に左側の横隔膜が適切に動かなくなると、左側のお腹の中に「腹圧(内圧)」を十分に作ることができなくなります 。すると、 安定性を失った左体幹を支えるため、脳は代わりに外腹斜筋や背中の筋肉(脊柱起立筋)を固めることで代用します 。この呼吸の癖が、24時間365日の緊張を生み出してしまうのです。
⑤ 小脳の機能差
小脳は、全身の筋肉の張り(トーン)を微調整するセンターです 。 左側の小脳の出力が低下すると、本来なら筋肉のトーンは下がります 。しかし、脳幹という別の部位が「支えがなくなって不安定だ!」と感知し、無理やり過剰な緊張を上乗せしてしまいます 。この「不安定を埋めるための過緊張」は、小脳の機能を活性化させない限り解消されません
⑥ 情動・扁桃体由来の防御パターン
不安や緊張、強いプレッシャーを感じると、脳の「扁桃体」という部分が過活動になります 。扁桃体が興奮すると自律神経の「交感神経」が優位になり、身体は瞬時に「逃げるか戦うか」のモードに切り替わります 。 この時、人間は無意識に身体を丸め、身を守るための「防御姿勢」をとりますが、この姿勢は特に左側の体幹を固めやすい性質があります 。精神的な緊張が、物理的な左体幹の固着として現れるのです。
4. 土井治療院&REBRUSHによる専門的な解決アプローチ
「肩が痛いから肩を治療する」という従来の枠組みでは、これまで述べてきたような複雑な神経学的連鎖を解き明かすことはできません。土井治療院&REBRUSHでは、機能神経学に基づいた高度な検査と治療を組み合わせ、あなたのインピンジメント症候群を根本から解決します 。
当院独自の「原因特定」プロセス
まず、前庭、視覚、呼吸、内臓、小脳、情動といった複数のレイヤー(階層)のうち、どこが筋肉の過緊張の「源泉」になっているのかを精密に見極めます 。これには、単なる触診だけでなく、目の動きのテストやバランス検査など、神経機能を評価する特殊な検査が含まれます。
独自の治療体系
1・8通りの鍼治療: 筋肉だけでなく、神経系のバランスを直接整えるための専門的な鍼治療を行い、深部の緊張を解除します 。
2・18通りの整体治療: 骨格の歪みはもちろん、内臓の偏りや筋膜の引きつりを多角的に調整し、身体の重心をセンターに戻します 。
3・機能神経学トレーニング: 脳への「正しい入力(視覚・感覚・前庭)」を行い、脳が「もう守らなくていい(緊張を解いても安全だ)」と判断するように再学習させます。これにより、治療効果を長期的に持続させます 。
結びに:スポーツを諦める前に
インピンジメント症候群の痛みが慢性化すると、「自分の肩はもう壊れてしまった」「一生治らないのではないか」と絶望的な気持ちになるかもしれません 。しかし、痛みの本当の原因は、肩から遠く離れた部位や、目に見えない神経の働きの不調に隠れていることがほとんどです 。
あなたの脳が発している「防御信号」を正しく読み解き、適切な処置を行えば、肩の痛みは劇的に改善する可能性があります。「もう一度、全力で腕を振りたい」というその願いを、私たちは全力でサポートします 。
まずは一度、ご自身の身体で起きている「神経の連鎖」を調べに来てください。








お電話ありがとうございます、
土井治療院でございます。