「投げると肩の前がズキッとする」
「リリースのあとに肩の後ろが抜けるように痛い」
「肩全体が重だるくて投げ続けると悪化する」
野球肩の相談では、痛む場所の違いが大きなヒントになります。一方で、痛む場所=原因の場所とは限りません。肩関節の痛みは、肩甲骨の動き、頸椎や胸椎の硬さ、骨盤と下半身の使い方の影響を強く受けます。
土井治療院では、肩だけを見て終わりにしません。
「なぜその部位に負荷が集中したのか」を評価し、再発しない投球動作に近づけます。
痛む場所で整理する「野球肩」タイプ別チェック
まずは痛みの場所を整理します。
人差し指で「ここ」と示せる痛みと、「この周辺」と広がる痛みでも見立てが変わります。
A:一点を指せる痛み → 局所の問題が多い
・筋肉、腱、筋膜の癒着
・滑走不全、局所炎症
B:範囲があいまいな痛み → 関節包・神経の関与が増える
・関節包炎症
・神経絞扼性障害(頸椎~腕の神経ルート)
・肩甲骨周辺の過緊張による防御性の痛み
一点を指せる痛みは、筋肉や筋膜の癒着、腱の局所炎症が主体になりやすい傾向があります。
一方、範囲があいまいな痛みは、関節包や神経の絞扼が関わる可能性が高まります。
“前側”が痛む場合に多い候補
- 上腕二頭筋長頭腱炎(肩の前~上腕前面に痛み)
- 肩峰下滑液包炎(腕を上げると鋭い痛み)
- 棘上筋腱炎(肩の外側~前外側に痛み、挙上で悪化)
後ろ側”が痛む場合に多い候補
- 棘下筋・小円筋の腱板障害(投球の減速局面で痛みやすい)
- 腱板損傷の初期(力が入らない、抜ける感じが出やすい)
“肩全体”が痛む場合に疑う候補
- 関節包の炎症(いわゆる関節包炎、動かすと広く痛む)
- 頸椎由来の関連痛(頸椎ヘルニア、頸椎症など)
- C5領域の神経障害で肩周辺に痛みが出るケースもあります
前が痛いのに「前を治療しても治らない」ことがある理由
肩の前側が痛いと、上腕二頭筋長頭腱や肩峰下滑液包だけに注目しがちです。
しかし、投球では上腕骨頭の位置が痛みを左右します。
ポイントは「オブリゲートトランスレーション(obligate translation)」です。
関節の回旋が不足すると、上腕骨頭が代償的に滑って動きます。
その際、後方組織が硬いと、上腕骨頭が前方に押し出されやすくなります。
そうして、前方で摩擦が増えると、前側に痛みが出ます。
つまり、前側の痛み=前側だけが原因とは限らないのです。
このように、痛む部位と原因部位が一致しないケースは、野球肩では珍しくありません。
野球肩の本質は「どこが痛いか」より「なぜそこに負荷がかかったか」
痛む場所が肩関節周囲でも、重要なのは負荷が集中した理由です。
原因を改善しない限り、投げ続けると再発します。
肩に負担をかける要因は、肩関節そのもの以外にも多く存在します。
土井治療院では次の部位を重点的に評価します。
- 肩甲胸郭関節(肩甲骨の滑走)
- 頸椎(神経・姿勢)
- 胸椎(回旋・伸展)
- 骨盤(体幹の土台)
- 股関節(踏み込みと回旋)
- 足部(荷重の安定)
肩に負担を集める「よくある4パターン」
1)肩甲骨が動かない(肩甲胸郭関節の問題)
肩甲骨が上方回旋・後傾できないと、肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)に負担が増え、
腱板と滑液包が擦れやすくなります(インピンジメント症候群)
肩甲骨の動きが制限されるのは、下記の筋肉が硬くなることが要因です。
- 僧帽筋上部
- 肩甲挙筋
- 菱形筋(大小)
- 広背筋(過緊張で肩甲骨運動を阻害)
- 前鋸筋上部線維の機能低下(働き不足)
※筋肉を緩めるだけでは変化が弱い場合があります。
そのケースは、筋緊張が続く背景に、神経の絞扼や姿勢要因が隠れていることが考えられます。
2)頸椎が硬い・神経が過敏(C5領域の関連痛)
頸椎の可動性低下や椎間孔周辺のストレスで、肩に痛みが飛ぶことがあります。
肩の治療だけで改善しないケースに多いです。現代は、スマホを長時間利用する野球選手も多く、頸椎由来の肩痛の人が非常に増えてきています。
頸椎由来を疑うサイン
- 首の動きで肩の痛みが変わる
- しびれ、感覚に違和感がある
- 肩の痛みが広範囲で説明しづらい
3)胸椎が回らない(体幹回旋が肩で代償)
胸椎回旋ができないと、トップから加速で肩が頑張りすぎます。
その結果、肩関節の前方ストレスが増えやすくなります。
4)骨盤・股関節が使えない(下半身の力が肩に乗る)
骨盤回旋と股関節内旋・外旋が不足すると、投球のエネルギーが肩に集中します。
肩は「最後に力を伝える関節」です。
土台が弱いと肩に負担が集まります。
土井治療院の考え方:再発を減らすための評価と施術の組み立て
土井治療院では、次の順序で整理します。
- 痛む場所と動作を確認する
- 肩関節の炎症所見と可動域を確認する
- 肩甲胸郭関節の動きと筋出力を確認する
- 頸椎・胸椎の可動性と神経症状を確認する
- 骨盤・股関節・足部の連動を確認する
- 投球フォームの癖を確認する
この流れで、局所治療と全身の連動の再構築を同時に進めます。
局所の痛みが落ちても、負荷パターンが残ると必ず再発します。
再発予防には、負荷パターンの修正を中心に行う必要があるのです。
よくある質問:ストレッチは必要か?
ストレッチは有効です。
しかしストレッチだけで野球肩を改善するケースはかなり少ないです。
筋肉の硬さが「結果」になっているケースがあるためです。
- 神経の絞扼で筋緊張が高い状態
- 肩甲骨が動かず腱板が過労になる状態
- 胸椎が回らず肩で回旋を代償する状態
この場合は、ストレッチより先に動きの土台を整える必要があります。
まとめ:痛む場所は入口。原因は別の場所にあることが多い
・前側の痛みは上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、棘上筋腱炎が多い傾向があります。
・後ろ側の痛みは棘下筋、小円筋など腱板障害が多い傾向があります。
・肩全体の痛みは関節包炎症、頸椎由来(C5領域)の影響も考えます。
・一点を指せる痛みは局所要因が多く、範囲があいまいな痛みは関節包・神経要因が増えます。
・前が痛くても原因が後方組織の硬さで、オブリゲートトランスレーションが起きるケースがあります。
・最重要は「どこが痛いか」より「なぜその部位に負荷が集まったか」です。
・肩甲骨、頸椎、胸椎、骨盤、股関節、足部の評価が再発予防に直結します。
注意事項(安全のため)
夜間痛が強い場合、力が入らない場合、しびれが強い場合は、整形外科で画像検査が必要になることがあります。
痛みが強い状態での投球継続は悪化リスクがあります。





お電話ありがとうございます、
土井治療院でございます。