ためしてガッテンで紹介された五十肩の治し方は効果あり?

五十肩の痛みを改善する良いセルフケアはないかとインターネットを検索すると「五十肩治し方 ためしてガッテン」と検索で表示されることがあります。

ためしてガッテンで紹介されていた「肩甲骨を引き寄せるストレッチ」をさっそく試してみると「痛みが少し緩和した」と感じる人もいれば、「返って悪化した」という方もいらっしゃると思います。

臨床の現場でも「五十肩なので肩甲骨を良く動かしてください」と肩甲骨の運動を推奨する整骨院、整体院の先生はいますが、肩甲骨を動かすことで五十肩を悪化させてしまうケースもあります。

実は、肩の状態によっては、肩甲骨を動かすストレッチが逆効果になり、痛みの引き金になってしまうケースがあるのです。

今回は、最新のリハビリテーションの視点から、五十肩の治療における「落とし穴」について解説します。

肩の動きは「2つの関節」のチームプレー

肩をスムーズに挙げるためには、主に以下の2つの関節が協力して動く必要があります

  • 肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ):腕の骨と肩甲骨をつなぐ、いわゆる「肩の付け根」の関節。

  • 肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ):肩甲骨と肋骨(胸郭)の間の動き。

正常な肩では、この2つがバランスよく動くことで、腕を高く上げることができます

もっと細かく言えば腕を上にあげるためには肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節のみではなく胸椎や頸椎、骨盤の動きなど様々な関節の動きが関係してきます。

「肩甲骨を引き寄せるストレッチが逆効果」になるパターンとは?

五十肩(肩関節周囲炎)の方に多いのが「肩甲上腕関節」がカチカチに固まっている(拘縮)ケースです。

このとき、腕を上げようとすると、動かない「付け根」を補うために「肩甲骨(肩甲胸郭関節)」が過剰に動きすぎてしまう(ハイパーモビリティ)ことがあります

ここが落とし穴! すでに肩甲骨が「動きすぎ」ている状態(代償動作)で、さらに肩甲骨を動かすストレッチを無理に行うと、その部位に過度な負担がかかり、炎症や痛みをさらに悪化させてしまうのです

整骨院や整体院の先生の間でも、安易に「肩甲骨から動かしましょう」という治療が選択されることがありますが、評価を誤ると「治療家が肩を壊している」と言わざるを得ない状況を招きかねません

また、「五十肩は肩甲上腕関節の動きを先に良くした方がよい」という研究論文もありますが、最新の整形外科学では動きすぎている(ハイパーモビリティ)肩甲胸郭関節のストレッチをしてしまうと五十肩の拘縮は益々悪化してしまうことがわかっています。

五十肩で肩が固まっている時の正しい対処法

特に糖尿病を患っている方の「フローズンショルダー(凍結肩)」などは、付け根(肩甲上腕関節)も肩甲骨(胸郭肩甲関節)も両方固まっていることが多いですが 、そうでない場合、まずは自分の肩がどのタイプかを見極めることが重要です。

もし、肩甲骨が動きすぎているのに「付け根(肩甲上腕関節)」が固まっているタイプであれば、以下の点に注意が必要です。

無理な挙上を避ける: 肩甲骨が正しく後傾(後ろに倒れる動き)できないまま腕を上げると、関節内で「インピンジメント(衝突)」が起き、腱板(肩の筋肉)を痛める原因になります 。高齢者の腱板断裂は猫背になることで肩甲骨が正しく後傾できずに肩関節がインピンジメントを起こしているのが原因です。「五十肩には運動が良いと噂に聞いたと」頑張ってむりくり運動していると「腱板断裂」というさらに症状が悪化した肩関節痛を引き起こすこともあることを念頭に入れておいてください。

動かす方向を変える: 肩甲骨の動きが制限されている場合、無理に真横や前から上げるのではなく、少し**「内転(腕を内側に寄せる)」させた状態**から上げると、衝突を避けやすくなる場合があります 。この動きではインピンジメントが避けることはできますが、根本的な治療ではないため、肩の付け根、肩甲骨両方が強調して動かせるようになることを最終目標としましょう。

まとめ

五十肩の痛みや可動域制限を改善するために「テレビで良いと言っていたから」「知人に勧められたから」と、痛みをこらえてストレッチを続けるのは危険です。

肩の付け根(肩甲上腕関節)が固まり、肩甲骨(胸郭肩甲関節)が過剰に動いている場合は、ストレッチの内容を見直す必要があります 。そのままやり続けると益々痛みは強くなり、可動域制限もでてくる可能性があります。最悪の場合は「腱板断裂」などの症状を引き起こすこともあります。

大切なのは、単一的な運動を繰り返すことではなく、自分の関節が「今、どういう状態か」を専門家に評価してもらうことです

五十肩は安静にしていれば治る疾患と言われていますが、自然治癒する症例でも平均で2年~3年かかります。また、中には「フローズンショルダー」といって肩関節が拘縮してしまい、痛みはないが全く挙上できないという症状が生涯残ってしまうこともあります。

五十肩のリハビリは状態によって全く異なります。むやみやたらにリハビリをおこなうのではなく、専門家の指導の下おこなうことでより早期に五十肩の痛み、可動域制限を改善することが可能です。

土井治療院