「肩が上がらない」「夜も眠れないほど肩が痛い」 一般的に「五十肩(肩関節周囲炎)」と呼ばれるこの症状は、整形外科では肩関節へのヒアルロン酸注射、整骨院や整体院では痛い場所を揉みほぐすマッサージや、ストレッチといった「局所への対処」が行われます。
しかし、数ヶ月、時には1年以上通院しても改善しない、あるいは一度良くなってもすぐに再発してしまうケースが後を絶ちません。なぜ、あなたの五十肩はなかなか治らないのでしょうか?
土井治療院とREBRUSHでは、その答えは「肩」そのものではなく、肩をコントロールしている「脳と神経系」にあると考えています。本記事では、機能神経学の視点から、最新の科学的根拠に基づいた五十肩の根本原因と、その解決策について詳しく解説します。
1. 五十肩の常識を疑う:なぜ「肩だけ」を見ても治らないのか
一般的な治療では、肩の筋肉(腱板)の微細な損傷や、関節包の癒着に焦点を当てます。もちろん、組織としての損傷は存在しますが、重要なのは「なぜその組織に過剰な負担がかかり、炎症が長引いているのか」という点です。
その仕組みとは…
筋肉に指令を出しているのは脳です。脳が「今の状態は危険だ」と判断すると、脳は防御反応として肩周りの筋肉をガチガチに固めます。この「脳が作り出した過緊張」を無視して無理に肩を動かすことで、炎症が悪化。痛みが慢性化するのです。
なかなか治らない五十肩を解決するには、以下の5つの神経学的要因を整える必要があります。
⚫️PMRF(橋延髄網様体)による抑制機能
⚫️小脳による運動予測と近位関節の安定
⚫️前庭系(平衡感覚)による重力適応
⚫️視覚システムによる空間認知と防御反応
⚫️呼吸と生化学的要因(体内炎症)
2. PMRF:痛みと過緊張を抑える「脳幹の守護神」
PMRFは、主に以下の2つの重要な役割を担っています。
同側の痛みの抑制: 右のPMRFは右側の不要な痛みをブロックします。
同側の交感神経(IML)の抑制: 不要な筋緊張を解き、リラックスした状態を作ります。
五十肩が長期化している方の多くは、このPMRFが機能低下しています。
PMRFが正しく働かないと、脳は「痛みに対するフィルター」を失い、さらに交感神経が暴走。肩周囲の筋肉(特に広背筋や大胸筋)を過剰に収縮させます
広背筋の代償が腱板を壊す
PMRFの機能不全により広背筋が過緊張状態になると、上腕骨を強く引き下げ、肩甲骨の動きをロックしてしまいます。この状態で腕を上げようとすると、本来働くべき「肩甲下筋」や「棘上筋」といったインナーマッスルがうまく働かず、関節内でインピンジメント(衝突)が起こり、腱板断裂や肩峰下炎症を引き起こすのです。
そして、断裂した部位の炎症や滑液包の炎症が長く続くと、長期にわたる痛みや筋力低下がおこり、やがて周辺組織が拘縮。結果、「肩が上がらない」という症状に繋がるのです。
3. 小脳:スムーズな動きと「予測」の司令塔
小脳は、運動のプログラミングと微調整を行う場所です。特に、肩のような大きな関節の安定には、小脳の「中間部」と「虫部」の働きが不可欠です。
小脳中間部と近位関節
小脳中間部は、肩や股関節といった「近位関節」の筋緊張を適切に調整する役割を担っています。
機能正常: 腕を動かす際、必要な筋肉だけを働かせ、不要な筋肉をリラックスさせます。
機能低下: 「力を入れる・抜く」のスイッチが故障し、動かすたびに筋肉が喧嘩し合い、摩擦が生じます。
予測的姿勢制御(APA)の欠如
私たちは腕を上げる際、無意識に「腕の重さで体が倒れないよう」に体幹を固める準備をします。これを**APA(予測的姿勢制御)**と呼び、主に小脳虫部が担当しています。 小脳虫部の機能が落ちていると、この「先読み」ができません。土台(体幹)が安定しないまま腕という「重り」を動かすため、肩のインナーマッスルに想定外の急激な負荷がかかり、組織を痛め続けることになります。
4. 前庭系と視覚:脳が感じる「空間の不安」
前庭系とは耳の奥にある感覚器官です。「肩の痛みになぜ目や耳が関係するのか?」と驚かれるかもしれません。しかし、脳にとって最も優先順位が高いのは「生存(倒れないこと)」です。
前庭系(耳石器・半規管)のエラー
耳の奥にある前庭系は、重力の方向や自分の位置を感知します。もし、前庭系からの情報が曖昧になると、脳は「いつ倒れるかわからない」という恐怖を感じ、全身を固めて防御姿勢をとります。 特に、**耳石器(卵形嚢・球形嚢)**の機能が低下すると、脳は地面との距離感を失い、足底を握りしめたり、肩をすくめたりして安定のための代償姿勢をとります。この「常に肩をすくめている状態」こそが、五十肩を治らなくさせている正体の一つです。
前庭系は、年齢と共に機能低下すると言われていますが、現代社会では仕事もほとんどの方がデスクワークであるため、頭を動かす機会が極端に少なく前庭系の機能は益々落ちていると言われています。「何もしていないのに肩が痛む」と訴える方がいますが、「何もしないから肩が痛くなってしまうのです。
周辺視野と脅威モード
視覚も同様です。周辺視野が狭くなっている(トンネル視の状態)と、脳は外敵に気づきにくいと判断し、常に警戒モード(交感神経優位)になります。そして、交感神経優位の状態が続くと炎症が慢性化。筋肉は緊張状態になり、肩の痛みを引き起こします。
一見肩の痛みとは無関係に思える周辺視野を広げるアプローチを行うだけで、ガチガチだった肩の可動域がその場で改善することは珍しくありません。これは、脳が「周囲の安全を確認できた」ことで、肩の防御用ブレーキを解除したからです。
5. 呼吸と生化学的要因:組織が治る「土台」を作る
神経系が整っても、組織そのものを修復する「材料」や「環境」が整っていなければ、完治は望めません。
過呼吸とフォワードヘッド
五十肩の患者様に多いのが、浅く速い呼吸(過呼吸気味)です。呼吸量が多いと、気道を確保するために頭部が前方に突き出す「フォワードヘッド」になります。 この姿勢は、肩甲骨を外側に開き、前傾させるため、棘上筋が通る隙間を物理的に狭くし、五十肩を悪化させます。
つまり、
呼吸の適正化(二酸化炭素耐性の向上)を行わない限り、姿勢の崩れは治らず、肩への機械的ストレスは消えないのです。
脳内炎症と栄養状態
慢性的ストレスや低血糖スパイク、鉄欠乏などは、脳内で「ミクログリア」という免疫細胞を破壊型に変え、脳内炎症を引き起こします。脳が炎症を起こしている状態では、痛みに対して過敏(痛覚変調性疼痛)になり、わずかな刺激も激痛として処理されてしまいます。腸内環境を整え、血糖値を安定させることは、五十肩のリハビリを成功させるための必須条件です。
6. 専門家としての視点:土井治療院・REBRUSHの独自アプローチ
本記事の内容は、数多くの臨床経験と、機能神経学(Functional Neurology)の学術的背景に基づいています。様々な治療をしても治らない五十肩は上記であげた要因が複雑に絡み合っている可能性が高いです。そのような方に単に「肩周りをほぐす」「肩を回す」といったリハビリをおこなっても、五十肩を改善することはできません。土井治療院では鍼灸治療、整体治療、REBRUSHでは機能神経学に基づいたリハビリで、どこへ行っても改善しない五十肩を根本から改善します。
① 鍼灸治療により脳内炎症を鎮静化、栄養吸収能力を上げる
五十肩が治りづらくなる一番の要因は「慢性炎症」です。慢性炎症の改善には鍼治療により迷走神経を活性し脳内炎症を鎮静化していきます。また、良質な栄養をとっても胃腸の状態が悪いと、吸収能力が下がり栄養失調状態になってしまうため、内臓全体の機能を上げる調整もおこなっていきます。
② 整体治療により小脳への刺激、横隔膜を使った深い呼吸の獲得
整体治療により関節や筋肉、筋膜、皮膚などの様々な感覚情報を入力し小脳機能を活性していきます。
また、浅い呼吸を長期間続けていると横隔膜を使わない呼吸になり、胸郭周りも固まってしまっているため、呼吸のしやすい胸郭に矯正していきます。
③ 機能神経学的リハビリによるPMRF、前庭覚、視覚の改善
どの部位の機能が落ちているのかを神経学的検査を用いて見つけ出し、機能改善のためのトレーニングをおこなっていきます。
REBRUSHでは海外の神経系リハビリ施設でも使用される特殊な機器を導入し、脳や前庭覚、視覚の機能向上をおこなっていきます
最後に…
様々な治療をしてもなかなか改善しない五十肩は、単に関節が固まった病気ではありません。 **「脳が、あなたの肩を守るために、あえて固めている状態」**です。
PMRFを活性化して痛みのフィルターを取り戻す。
小脳を整えてスムーズな動きを再学習する。
前庭系と視覚を統合して空間の不安を取り除く。
呼吸と栄養で組織が治る環境を整える。
これらの要素が揃ったとき、あなたの肩は驚くほど自然に動き出します。
(空行)
もし、あなたが「どこに行っても治らない」と悩んでいるのであれば、それはまだ自分の「脳と神経」へのアプローチに出会っていないだけかもしれません。
「自分に合った根本的な解決策を知りたい」という方は、
ぜひ一度、土井治療院・REBRUSHへご相談ください。
(空行)
あなたの脳の状態に合わせた最適なプランをご提案いたします。





お電話ありがとうございます、
土井治療院でございます。