緑内障を治療する最大のポイント「眼圧」とは

 

 

緑内障は何らかの原因で脳へと繋がる視神経が障害され、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。

最悪、失明する場合があります。実際に、緑内障は日本での失明の原因疾患で第1位とされています。

 

緑内障発症のメカニズムは、未だすべてが解明されているわけではありませんが、

原因の1つとされる“眼圧の上昇”を抑えることは、現状 緑内障の進行を防ぐ上で最も有効と考えられています。その眼圧の値は、緑内障の経過を観察するうえで目安の一つとなっています。

 

そもそも「眼圧」とは何なのか

 

「眼圧」とは、目の中を満たす房水(ぼうすい)という液体によって生じる「眼球内部の圧力」のことで、目の硬さを表します。私たちが正しく物を見るために、眼球には一定の硬さが必要とされています。

 

「房水」は、毛様体(もうようたい)から分泌され、血管のない水晶体(すいしょうたい)や角膜(かくまく)に栄養や酸素を与えたあと、隅角(ぐうかく)から排出されて静脈に吸収されます。通常であれば、毛様体でつくられる房水の量と隅角から排出される房水の量のバランスが取れていることで、房水が循環しほぼ一定の圧力が眼球内で発生し、眼球の形状が保たれます。

 

しかし、何らかの原因で隅角にある「線維柱体(せんいちゅうたい)」というフィルターが目詰まりを起こすと、房水がうまく排出されなくなります。すると、眼球内の房水の量が本来の容量以上に溜まってしまい、眼圧が上昇してしまうのです。

 

このようにして眼圧が上昇すると、眼球の裏を通る視神経に過大な圧力がかかり、視神経が傷つけられることで視野が欠損してしまう。

これが、緑内障です。

 

 

眼圧はどこまで下げれば良い?眼圧の正常域とは

 

では、視神経を傷つけてしまう「眼圧」をどれくらいまで下げれば、緑内障の進行を止めることができるのでしょうか。

 

眼圧は数字で表され、その単位は「mmHG(ミリメートル水銀柱)」が使用されます。これは血圧でも同じ単位が使用されるため、この単位を見たことがある人もいるかもしれません。

 

眼圧の正常域は「10~20mmHG」とされていることから、

眼圧を20mmHG以下に保つことが出来れば緑内障の進行を止めることが出来るのかというと、実はそうではありません。

眼圧を20mmHG以下に維持していても緑内障が進行してしまう人もいるのです。

 

それは、どういうことなのか。

そもそも、この「正常域」はどのようにして決められたものなのかというと、健康な人を集めて眼圧を測定し、95%以上の人が含まれる値が10~20mmHGだったことから、その値が正常域とされたのです。

しかし、正常域というよりも平均値と言った方が良いかもしれません。平均値ということは、当然高い人もいれば低い人もいるということです。そのため、眼圧が20mmHGを超えていてもそれが普通の人もいれば、逆に眼圧が10mmHGでも異常がある人がいるということです。

つまり、眼圧の正常域は、あくまでも統計学を用いて決められたものであり、その人にとっての正常域を示しているものではないということです。

 

さらに、注意しなければならないのは眼圧は一日の中でも変動があるということです。

一般的には、就寝時から朝方に高く、日中から夕方に低い傾向があるなど、1日の中でも数mmHG程度の変動(日内変動)があります。座った姿勢より寝ている姿勢の方が高く、うつ伏せや横向きの姿勢で寝るとさらに高くなります。就寝時から朝にかけて高い傾向があるのは、寝た姿勢でいることも関係しています。

また、逆立ちやヨガなどで頭が身体より下になる姿勢をとると急上昇します。夏より冬の方が高く、カフェインを摂取したり大量に水を飲んだりしたときも上昇することがあります。

つまり、眼圧は1回の測定値だけで高い低いを決めるのではなく、何度も測って自分の傾向を知ることが大切だということです。

 

 

緑内障を進行させないための眼圧の目標値設定の仕方

 

では、自分の眼圧のベースラインがわかったら、眼圧をどこまで持っていけば良いのか。ここからはその目標値の設定の仕方についてお伝えしていきます。

 

一般的には、目標値の設定の仕方は二種類あります。

まず一つ目は、ベースラインから20%下げることを目標に設定するやり方です。ベースラインが15mmHGであれば、12mmHGに設定するということです。ただし、緑内障の種類や患者さんの年齢、進行の度合いによっては、目標値をもう少し低く設定する場合もあります。

通常、1~3か月ごとに眼科に通院し、眼圧を測ってその経過を観察していき、眼圧を目標値に維持できるようにしていきます。また、最初に決めた目標値も、長い経過の中で年齢や病状に合わせて変更していくことがあるので、医師の方と相談して決めるのが良いでしょう。

 

二つ目は、緑内障の進行状況によって目標値を設定するやり方です。その設定の仕方は以下のとおりです。

①視野欠損があるものの、自覚症状がないような初期の段階

→ 目標眼圧:19mmHG以下

②視野の欠けが少し広がってきている中期

→ 目標眼圧:16㎜HG以下

③さらに視野欠損が広がって、見えにくいところがあることを自覚するようになる後期

→ 目標眼圧:14mmHG以下

 

このように視野欠損が進行している方ほど、より低い眼圧を保つことを目標にします。

また、治療を開始後も病状は進行し、そのスピードが速い場合、より低い眼圧を目標にします。血縁者に緑内障患者がいる、糖尿病を患っている、高血圧であるなど、緑内障の危険因子を持っている人も目標眼圧を低めに設定します。

 

 

緑内障の治療で大事なこと

 

緑内障は治すのが難しい病気ではありますが、これまで国内外で行われたさまざまな研究から、眼圧を下げる治療をしっかり続ければ、失明を回避できる可能性が上がることが分かっています。

どんなタイプの緑内障であっても、またどんな進行度であっても、眼球内の圧力である眼圧を下げることが進行予防に有効であることが示されているのです。

 

初めにお伝えした通り、緑内障は日本人が失明する原因疾患の第1位ではありますが、実は実際に両目ともに失明してしまう患者さんはかなり少ないです。

 

とはいえ、視力を維持するために重要なことは、「徹底的な予防」、「早期発見・早期治療」、そして「治療の継続」です。眼圧の上昇や視野異常の発見が早ければ早いほど、治療によりその後も不自由なく過ごせる可能性が高まるのです。

最近の正常眼圧緑内障で、治療をした人としなかった人の視野障害の進行を比較した調査では、治療を継続した人の約80%は、あまり進行しなかったという結果もあり、緑内障初期から治療した人の方が進行を抑えられることもわかっています。それゆえ、眼圧が上がってしまったからといって、そこまで絶望的に考える必要はないのです。

しっかりと治療を行い、眼圧を上げない生活を送るよう心掛けていけば、眼圧が下がることは十分にあります。継続して治療していくことが重要なのです。

逆に眼圧が下がったからといっても、それは一時的なものである場合があるので注意が必要です。一度、眼圧が下がっても、治療を止めてしまったり、眼圧が上がるような生活習慣を続けていれば、眼圧は再び上昇し緑内障を進行させるリスクは上がってしまいます。

 

その数値に一喜一憂するのではなく、前向きに継続して治療を続けていくためにも、一つの指標として眼圧を見ていくようにしましょう。「眼圧が上がらないようにするためには何をすれば良いかな」、「眼圧が上がってしまったのは、あれがいけなかったかな」など、目的意識を持つことで、進行させない継続的な治療に繋げていきましょう。

土井治療院