リウマチの痛みを悪化させているのは脳が原因?

最新の研究ではリウマチの痛みの悪化の背景には“偏桃体症候群”という脳のストレス反応が関係している」ことをお伝えしました。

薬や注射ではなかなか良くならない慢性的な痛みの裏側には、“関節そのものの炎症”だけでなく、“脳の過剰な防御反応”が深く関わっていることが、近年の研究で明らかになっています。まだご覧になっていない方は先のそちらの記事をご覧ください。

  1. 最新の研究で判明!リウマチの原因に“偏桃体症候群”が関係していた
  2. リウマチの痛みが運動で改善するメカニズムとは?
  3. リウマチの痛みを悪化させているのはあたなの心?

偏桃体症候群が起こる原因4つのうち、2つ目は「背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の働きが低下する」ことです。今回は背外側前頭前野(DLPFC)について詳しく説明していきます。皆さんの何気ない日常生活が背外側前頭前野の機能低下を招き、関節リウマチの痛みを悪化させている可能性が大いにあるからです。

背外側前頭前野(DLPFC)とは?

背外側前頭前野(DLPFC)は、脳の一部でこめかみより少し上にある領域を指します。

意思決定を行う、合理的に物事を考える、情動を抑制するといった「知能」の部分を担当する、脳の司令塔とも言われています。

また、次章でお伝えする「腹内側前頭前野」のコントロールも行っています。

背外側前頭前野の働きが低下すると、痛みを過剰に感じやすくなり、交感神経の過緊張が起こり、偏桃体症候群につながります。

この状態は、なかなか治らない慢性痛に大きく関係しているとも言われています。

背外側前頭前野の働きが低下する原因とは何か?

それには、ストレスや加齢、睡眠不足など原因は様々ありますが、特にスマートホンやPC等、デジタルデバイスの過剰使用が大きな要因となっています。

 

デジタルデバイスの画面からはブルーライトという、強いエネルギーを持つ光が出ています。

ブルーライトと聞くとすぐにスマホやパソコンをイメージしてしまいますが、実はもともと太陽光に含まれる光の一種です。

朝、太陽光に含まれるブルーライトを浴びることで、私たちの身体は交感神経が立ち上がり、活動モードに切り替わります。そして夜に副交感神経が優位になることで休養モードになり、眠ることができます。つまり、本来ブルーライトは体内時計に直接関係するもの。

しかし、現代は就寝直前までスマートホンを見ている人は少なくありません。

そうなると、夜間もブルーライトを浴び続けることになり交感神経が活動し続け、慢性的な睡眠不足を起こし、脳機能が低下していくのです。

また、デジタルデバイスの影響はブルーライトによるものだけではありません。

その使用によって起きる「視野狭窄」も、交感神経を過剰に働かせます。

もう少し詳しく解説します。

 

視覚には「集中視」と「周辺視」の2種類があります。

集中視は視野の中心部分で、主に物体を鮮明に見るために使われます。

周辺視は、視野の周りの範囲で、物体が動いているかどうかや、その大まかな位置を把握するのに役立ちます。

 

つまり、スマホに集中すると、視野の中心に注意が集中し、周辺視野が狭くなる「視野狭窄」が起こります。

そうなると、人間は注意できる範囲が限られていることから、視野の中心に注意を配分すると、周辺視野への注意が低下するのです。

歩きスマホで周囲が見えにくくなるのは、この視野狭窄が原因の一つです。

 

また、この視野狭窄が起きると脳は自分の身が危ないと判断し、身を守るために交感神経を過剰に働かせるのです。

 

一説には、一日二時間以上のデジタルデバイスの使用で、背外側前頭前野の機能低下を起こすと言われています。

お仕事やライフスタイルの関係で、使用を一日二時間以下は難しいという方は、必要以上に使用しないよう心がけていきましょう。

特に夜の使用はブルーライトの影響を強く受けるので、寝る1~2時間前にはスマホやパソコンを使わないよう、また寝室にスマホを持ち込まないようにしましょう。

 

関節リウマチの痛みで苦しむ方は、少しでも痛みが和らぐ方法や改善へ向けてインターネットでたくさんの情報収集をおこなっていると思います。

しかし、過度にデジタルデバイスを使用する時間が長くなってしまうことで背外側前頭前野の機能が低下し、偏桃体症候群を起こし、痛みを悪化させている可能性があるのです。

 

リウマチの痛みを改善するには痛い関節だけでなく体全体を診ることが大事

人の身体は、本来すべてがつながり合い、全体のバランスの上に成り立っています。
しかし現代医学では、脳は脳外科や神経内科、内臓は内科、リウマチはリウマチ科といったように専門が細かく分かれているため、全体像の中で何が症状を悪化させているのかを見落としてしまうことがあります。

一方、東洋医学では古くから「病は全身のバランスの乱れ」として捉えます。
私自身、最新の学問である機能神経学を学ぶ中で、東洋医学の考え方と深く通じる部分が多いと感じています。
何千年も前から身体を“ひとつのつながり”として診てきた東洋医学の知恵は、現代になって改めてその素晴らしさを実感させられます。

リウマチの痛みを東洋医学で和らげることができるといわれる理由も、身体全体のバランスを整えることを目的としているからかもしれません。
痛みを“抑える”のではなく、“整える”という考え方が、東洋医学の魅力だと感じます。

土井治療院